2021/04/09
2021年3月26日OMC勉強会レポート
◆OMC勉強会について◆
当院ではOMC(Open Medical Community)とネーミングしている勉強会を、2020年2月まで、毎月第1金曜日に、定期的に開催しておりましたが、新型コロナウイルス感染対策により、会場での勉強会は現在中止しております。
現在、毎月第3金曜日に、Zoomにてオンライン形式での勉強会を開催しております。
「オンラインで勉強会の参加をしたことがない」
「Zoomをつかったことがない」
など、オンラインでの勉強会に対し、不安の声がよく聞かれますので、勉強会の様子や、オンライン参加に関する参加者の皆様のお声をお伝えしていきたいと思います。当院の勉強会をきっかけに、オンラインに踏み込んでみていただける方が増えたら幸いです。
◆勉強会の内容◆
「治療中断歴のある患者さんへの透析導入」
<事例概要>
65歳男性 内縁の妻と二人暮らし
#S状結腸癌術後(骨転移、リンパ節転移、肝転移疑い)
10年程前から糖尿病にて近医に通院し、その後脳梗塞発症し加療を受けていたが、途中より通院を自己中断していた。
左下腹部痛を主訴に外来受診。精査にてS状結腸癌と診断。腎機能障害あり補液行いながら手術施行。しかし、腹壁に浸潤した腫瘍は完全に切除できず、化学療法を開始した。
10コース実施し、画像上は病変指摘できない状態を維持できていたが、その後通院を自己中断。
半年後程後に受診され、「お金が無くなって受診できなかった。年金は3万円ほどしかない」「内縁の妻の貯金が100万くらいあり、同居している限り生保は難しいと言われた。でも認知症があるので使わせてもらえない」などと述べた。
未受診の間に腎機能はさらに悪化し、また金銭面の問題もあるために化学療法の再開は困難と考えられた。CTでも傍大動脈リンパ節転移が顕在化し、肝転移も疑われた。腎臓内科・糖尿病内科の通院も再開された。
翌年には左胸痛が出現。心筋梗塞など疑われ精査するも異状なく経過観察されていたが疼痛が徐々に悪化。医療用麻薬を導入するも疼痛の改善に乏しく、CTでは責任病巣が明らかではなかった。疼痛の持続から食欲も低下し、腎機能も悪化したため腎臓内科にて入院。疼痛の精査目的でMRI撮影したところ胸椎Th4の骨転移判明し、同部位に放射線治療開始。放射線治療後は疼痛はやや改善傾向にて退院することとなった。
問題点
・腎機能は数か月で廃絶することが予測されている。透析導入の適応があるかどうかが微妙。癌としての予後は緩和ケアに専念で半年ほど、ただ化学療法再導入すれば1~2年に延びる可能性はある。本人は透析のための3回/週の通院には非積極的(しかも化学療法と並行して透析するなら井田病院への通院が必須になるかもしれない)かつ、通院中断のリスクもある。
・内縁の妻は認知症があり、本人の状況の把握や管理は難しい。その他実子等もいるが、疎遠で連絡はとっていない。
・治療を選択する場合としない場合でどうなるか、病院の医師と地域包括支援センターの看護師より本人へ説明しているが、本人の理解度はあまり良くない。
・生活保護申請中。内縁の妻に、後見人がつく予定。
<皆様から出た意見>
・なるべく落ち着いている時に、生きている時に絶対やりたいことを聞く。そのために残された時間が足りるのか。
・本人に説明する医師自身が透析などの治療をやった方がいい、やらない方がいいと感じることがあるのか、それを本人がどう感じているのかで、相手に伝わってしまってることがあるかも。
・今後ヘルパーさんとか訪看とか出入りする時に、日常の中で本人の意思がぽつぽつと出てくると思うので、それを共有しながら話をしていければいいのでは。
・治療方針の前に、患者さんのお金の心配と奥様の心配をクリアしなければならない。まずそれをクリアできれば自分のことに向き合えるのでは。
・まずは痛みの緩和を優先して、本人が冷静に考えられるようにしていければいいのでは。
・脳梗塞の既往歴もあるので、認知機能にも問題あるのでは。予後についても病識がないので、数字で「あと何年」とか先生からご説明をいただいたら、現実というものを感じられるのでは。
・透析をするかしないかで生活がガラリと変わるので、人としての尊厳を大切にして、本人の意見をもらう
・保護が受けられなかったとしても、障害の制度も使えるのでは。
・透析の決断は誰しも迷うもの。どうして透析選択したのか分からない患者さん、迷っている患者さん、透析をしなかった患者さんをよく見かける。
・本人が自分が決断できるような支援ができたら。みんなでチームとして本人と関わって、先生の説明も共有して、本人が自分がどうしたいか大事にする方針を立てられたら。
・本人と奥様の二人の意思を確認した上で、過ごしたい過ごし方を主軸に決めたらいいのでは。今後どういう生活をしたいのか。
・奥様のことをすごく心配されているので、他の家族もいるので、本人の意思も確認しつつつなげていくことがいいのか。
<事例提供者より>
地域包括支援センター:本人の家族の話は聞いてないので、人生を閉じていく、準備をする方には大事なことだと思った。
苦痛が緩和されている時に話せていけたらと思った。
予後のことって先生に話してほしいというのは言いづらいけど、皆さんが考えた上で予後のこともという発言をしてくださったので、声に出していいのかなと勇気をいただいた。
今後はお金の面がクリアになるので、複数の声で本人の声を聴きながら拾っていきたい。
主治医:治療方針について、先生自身の意思は?というコメントがあったが、「透析なんてやらない」という本人の意思があるので、透析に積極的ではないというのが本音。
ただ、それが厳密な情報提供のもと成り立ってるのか。透析をしない、医療をしない前向きさもあるが、医者的な発想でいうと、できる医療は受けさせた方がいい、という葛藤があった。
正直に本人に話をして、改めて本人の意見を聞いてみてもいいかなと思い、葛藤がクリアになった。
<終了後アンケートより>
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次回のOMC勉強会は4月16日(金)19時~です。
(メールでの定期案内をご希望の方は、下記メールアドレスまでご連絡ください。)
また、とりあげてほしいテーマや紹介したい事例等ありましたら、当院までご連絡ださい。
<問い合わせ先>
やまと診療所武蔵小杉 OMC勉強会担当宛
TEL:044-431-8150
FAX:044-431-8151
メール:infokosugi@yamato-clinic.org
※メールで1週間以内に返信が来ない場合は、大変お手数ですがお電話かFAXでお問合せください。