2021/01/05
2020年11月20日OMC勉強会レポート
◆OMC勉強会について◆
当院ではOMC(Open Medical Community)とネーミングしている勉強会を、2020年2月まで、毎月第1金曜日に、定期的に開催しておりましたが、新型コロナウイルス感染対策により、会場での勉強会は現在中止しております。
現在、毎月第3金曜日に、Zoomにてオンライン形式での勉強会を開催しております。
「オンラインで勉強会の参加をしたことがない」
「Zoomをつかったことがない」
など、オンラインでの勉強会に対し、不安の声がよく聞かれますので、勉強会の様子や、オンライン参加に関する参加者の皆様のお声をお伝えしていきたいと思います。
当院の勉強会をきっかけに、オンラインに踏み込んでみていただける方が増えたら幸いです。
◆勉強会の内容◆
今回は精神疾患の患者さんの事例について、事例検討会を行いました。
事例に関わっていた在宅診療の医師、訪問看護師さん、訪問薬剤師さんより、事例の紹介をいただき、グループトークをしました。
<事例の概要>
下肢がほとんど動かず、おむつをあて、長期間自宅で引きこもり状態で生活されていたが、福祉の介入に本人拒否あり、障害支援サービス等導入されていなかった。入浴は年単位でできておらず、自室はゴミであふれかえっている状態であった。
同居の母親に訪問の医療介護サービスが介入していたが、本人は奥の部屋から顔をみせずに引きこもっている状態であった。
ベッドの交換や水分摂取のお手伝いなど、本人に対し徐々にサービスが介入できるようになったものの、本人に「自分をみられるのが嫌」「身体に触れられるのが嫌」という気持ちがあり、本人の機嫌により、介助をできる時とできない時があった。
訪問医介入当初より37度台の発熱が続き、血圧80~90台で経過しており、褥瘡もできている様子ではあったが、本人の拒否にて確認できず。採血にて低カリウム血症があり、訪問医より入院をすすめるも拒否あり。その後自宅で呼吸停止あり、搬送先でご逝去となった。
<皆様から出た意見>
- 今回のケースのふりかえり
・役所にCMのような支援者をつけてくれないかお願いしてたが、それはできないといわれた。
・医療処置入院は行政から提案あり、搬送する日が決まっていたあとに亡くなってしまった。
- 訪問診療医より
誰もキーパーソンがいない状況で、情報共有がもっと必要だった。
誰に決定権があれば、もっと動けたか、もやもやしている。
もっと強制的に動いたらよかったのか。
年齢も若いし採血データからみてもっと改善の予知があった。
もうちょっと早ければ、もうちょっと信頼関係ができていれば。
打ち解けられる時間が足りなかった。
- 訪問看護師より
医療者としては、入院しての治療がいいと思われるが、
本人からすると、今と異なる環境で、大部屋でほかの入院患者さんがいる中で生活できたのか。
亡くなってしまったけれども誰にも自分の身体をみられることなく亡くなれたのは、幸せだったのではないか。
仮に強制的に入院して身体は良くなったとしても、人とのかかわりを拒否して結局同じことになった可能性もある。
命が1年伸びたとして、それは医療の成果ではあるが、そのことが彼女にとっての幸せなのか考えるとどうか。
- 訪問薬剤師より
痛い痛い言いながら、新しいベッドは嬉しそうだった。
ヘルパーさんがつくってくれた野菜スープがおいしかったなど、弾む内容の会話を聞いていると、家での生活がよかったこともあったのでは
はたからみてると壮絶だが、どこかに幸せの着地点はあった気がする。
- その他提案意見など
・精神疾患をもつ患者さんは孤立する傾向がある。
他の患者さんでも、様々な支援者とつながってネットワークを密にする、家族と仲良くなるなど実践していたケースがあった。
・カウンセラーとかいれられたらよかったらとも思うが、人が介入するのが嫌な人だったから難しかったのではとも思う。
・行政がもうちょっと早くに介入できなかったのか。
介入のチャンスの節目はあったのではないか。
・解決策が非常に難しい。
支援する人という殻をかぶらずに入っていける関係性が築けたら、コミュニケーションの鍵を握っている人が長く関わることができれば、本人の心が溶けていくような、いい方向に向かうことができたりしのたのか。
・行政が、拒否する人だからできることはありませんではなく、コミュニケーションを取り続ける関わり方をしてくれていたら違う結果になったのではないか。
<西先生よりまとめ>
訪問診療や訪問看護などは契約関係にあるので、来るなと言われたら強制的に入る権利はなくなってしまう。自らが助けを求めておらず、セルフネグレクトになっている人に対して、医療介護職として入れる限界があると感じる。
そのようなときに、行政がもっている権限を利用して何かできないか。
措置入院を取らざるをえないのか。ただし、そのあとの信頼関係を全部破壊することになりかねないリスクもある。
デスカンファの振り返りとしては、「何ができたか、できなかったか」「同じようなケースで今後に何をつなげていくか」が話すポイントとなるが、その内容で話せていたと思う。
亡くなってしまった結果は悲しかったと思うし、本人もまだまだ死ぬつもりはなかった。
ただ、結果的にあのタイミングで最期を迎えられたのは、経過の中では一つの結末として、なしではなかった、ということを皆さんの中で言語化できたのは、カンファレンスの価値でもあるのかなと思う。
<終了後アンケートより>
- 回答者
訪問看護、CM、薬局
- 感想など
・「支援の押しつけ」にならないよう、悩みつつチームメンバーとともに自分たちのかかわりを振り返る大切さを教えていただいた。
・かなりヘビーな内容だったので、介入の参考になった半面、事情の詳細を知らない私が発言することが実際関わった皆様のお気持ちを傷つけていないか気にはなる。
- Zoomについて
・対面でお話したかった思いはあるが、これまでは子どもがいたため勉強会の参加が難しかったので、オンラインであれば今後も参加できるとうれしく思う。
・思った以上に操作が難しくはなかった。
- 今後とりあげてほしいテーマ
・統合失調症について
・終末期や難病のICで先生方が気をつけておられること、難病の基礎知識、在宅での人工呼吸器の管理について
・在宅医療に移行した方がいいと思う患者さんへの勧め方。(本人家族に抵抗がある場合)
***********************
今後のOMC勉強会の日程と内容はまた改めてご案内します。(メールでの定期案内をご希望の方は、下記メールアドレスまでご連絡ください。)また、とりあげてほしいテーマや紹介したい事例等ありましたら、当院までご連絡ださい。
<問い合わせ先>
やまと診療所武蔵小杉 OMC勉強会担当宛
TEL:044-431-8150
FAX:044-431-8151
メール:infokosugi@yamato-clinic.org
※メールで1週間以内に返信が来ない場合は、大変お手数ですがお電話かFAXでお問合せください。