2019/10/11
令和1年9月6日OMC勉強会レポート
「制度内で対応困難な事例をどう解決するか」をテーマにOMC勉強会を開催しました。今回はやまと診療所武蔵小杉から事例を紹介しました。
■事例の要約
Cさん
70代女性、独居、夫は数年前に他界、要介護1、生活保護、連絡可能な親族なし、犬と生活
#右下肢閉塞性動脈硬化症
#著明な腰痛
#うつ病
平成29年より平成31年にかけて上記疾患で血管内治療を前医にて実施、同時に近医心療内科でうつ病と診断され、通院加療していた。平成31年9月と10月に感染性腸炎で、前医にて入院加療。次第にADLが低下し、通院困難となり前医からの依頼で当院訪問診療が開始された。
当院介入直後から、胸痛や呼吸苦などの訴えが複数回あったが異常所見を認めず、狭心症疑いで内服加療、経過観察をしていた。その後数回、胸苦の訴えで自ら救急車を呼んで病院に搬送された。不安などの心因要素も考え、前医と相談の上、近医心療内科にコンサルトして外来受診するも、対応不可とのことで終診となった。
以降、胸痛時の指示としてニトロペン舌下。不安時の指示として①乳糖内服 ②無効時 リーゼ(抗不安薬)錠内服の指示を出し経過観察していた。抗不安薬は乱用の恐れがあったため、訪問薬剤師に週1回、10錠づつ手渡ししてもらうよう依頼した。
生活保護費をペットの餌やトリミング代に使用して、たびたび電気・ガスを止められる、介護サービス費の滞納、近隣に借金をして返済しないなど、金銭管理能力に問題があったが、明らかな認知症症状はなかった。
今年7月にCMから、食事が摂れていないようだと報告がある。往診時にはボーッとしており、発熱もあった。入院を検討するもペットの預け先がないため、点滴時のみペットをリードでつなぎ、抗生剤点滴のみを実施した。
1週間後、CMよりベッドマットに及ぶくらいの水様便があったと報告がある。訪問時、本人とペットが便にまみれた状態で、本人の意識レベルの低下も見られたため、脱水疑いで前医へ救急搬送となった。搬送中に意識レベルが回復し、病院到着時には完全に覚醒。抗不安薬の過剰摂取が原因と考えられた。本人は自宅退院を希望したものの、部屋の汚染により生活できる状況ではなく、前医へ交渉の末、数日間社会的入院ののち、現在は自宅過ごされている。金銭管理などの問題に関し、地域包括支援センターや区役所の高齢福祉係・生活保護課も介入し、カンファレンス等を開催している。
担当CMからの追加情報:
・ペットのマッチングも進めていたが、結局現状のままで、ヘルパーが1回500円で世話をしている。
・現在デイサービスに通っており、本人も気に入っているので増やしたいが、昼食代が払えないので増やせていない。
・最近、1年分の家賃を滞納していることが発覚し、生活保護費から天引きされるようになった。
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■共有された意見
―生活保護費を振り込みではなく、役所に取りに行く形で生活指導してもらい、滞納によってライフラインが止まらないような対策を役所と一緒に行えないか
―セルフネグレクト事案として行政に通報するのも1つの方法ではないか。地域見守りセンターと連携を取れないか。
―発達障害の可能性があるのではないか。うつ病の診断に疑問を感じる。
―本人が本音を話せるキーパーソンがいれば、金銭管理の指導をできるのではないか。金銭管理の問題を解決するためには、後見人を立てるのがベストではないか。
―何に不安を感じているのか探れるといいのではないか(抗不安薬を大量摂取してしまう理由)
―本人は困っていなくて、困っているのは周りだけではないか
―一度サービスを全て止めて、本人が困るのを待つのも1つの方法ではないか
―今後のことを考え、生活を管理できる能力を身に着けてもらうことが必要ではないか
―本来家族がやるべきことをCMが善意でやってくれている部分があるので、行政に対応してもらう必要があるのではないか
―行政の担当者が動かないのであれば、その旨を担当者の上司に報告し改善してもらったり、担当者を変えてもらったりすることもできるのではないか
―ペットと入れる施設なら、本人が入所を前向きに考えるのではないか
―まず、すぐにできる対応策は、何か起こった時に対処できるよう、周囲が準備をしておくことではないか
西先生からは、「簡単には解決策が出てこないが、本人が困っていないなら本当に困るまで、周囲は少し離れて準備をしながら待ってみるのも1つの方法かもしれない。また、公的機関での解決が困難である場合、地域の人が持っている情報や活動など、社会的なつながりを巻き込んで取り組んでいく必要がある(=社会的処方)」とのことでした。
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次回のOMC勉強会は、令和1年11月1日(金)です。ぜひ奮ってご参加ください。