今回は「虐待疑いのある高齢認知症患者の事例」をテーマで、事例検討会を開催しました。やまと診療所武蔵小杉が事例を提案し、川崎市立井田病院の西智弘先生がファシリテーターとして進行していきました。医療・介護従事者としてどのように介入していけば良いのか、参加者がグループになり、話し合いました。

【今回の事例】

患者:Aさん 80歳 女性
病名:認知症、高血圧症、糖尿病、腰痛症
背景:ご主人は数年前に他界。息子さんが近所に住んでおり、仕事後に毎日様子を見に来ている。

2年程前より認知症が進行し、外出して家に帰って来られない、規定以外の日にゴミを出してしまう、お風呂に入らない、薬を飲み忘れるなどの状態が多く見られるようになった。入浴付きのデイサービスや、服薬介助の為の訪問介護などを担当者会議で提案するも、息子さんに拒否されている。

1年程前より、時折、本人の顔や四肢に痣や傷が見られるようになり、本人は毎度「転んだ」と主張されていた。しかし、近所の人から、「いつも部屋から息子さんの怒鳴り声が聞こえる」「ゴミ出しを間違えたりして息子さんに怒鳴られた次の日に、痣ができることが多い気がする」との証言あり。一度だけ、近所の人に「息子に蹴られた」と明かすも、その後本人より虐待の訴えは聞かれていない。この事例について、どのようにアプローチや支援が考えられるか。

【事例に対して出た意見】

・息子さんへ精神的な面で介入することは出来ないのだろうか。
・息子さんの逃げ場がないと思うので、理解者になる。
・息子さんを変えるのは難しいのではないか。
・息子さん抜きで、関係者がどうやってやっていくのか方向性を話し合うのはどうだろうか。
・息子さんは本当は母親に愛情があるのではないか。なかったら、もう既に置いて逃げているはずなのではないか。
・息子さん宛に共有ノートを置いてみるのは良いのではないか。共有ノートを置いたことで、ご家族が考えを書いてくれて、通じ合えるようになった事例がある為、同じように試してみるのはどうだろうか。
・息子さんがどういう思いを持っているのか分からないので、まずはこちらの提案を話して分かってくれる人なのか、思いはあるがコミュニュケーションが上手くいかない人なのかなど、息子さんを知る為にアプローチをしてみるのはどうか。
・第三者の介入を増やしていった方が良いのではないか。
・近所の人たちにもAさんの認知症の病状を知ってもらうのはどうだろうか。
・虐待はやる側がもちろん悪いが、やる側にも必ず理由がある。母親との関係性や現在の状況などでやってしまうこともあると言われている。

【援助者としてどのようなアプローチが可能だろうか?】

このような事例の場合、どのようなアプローチを行なっていけば良いのか、西先生からは次のような意見がありました。

「実際に、暴力的な部分が有るか無いか分からない状態だとしても、ネグレクト的な部分はあると思います。生活面にも問題があるので、整える為にもっと介護サービスなどを入れることが重要になってくると思います。また、息子さんにアプローチするなら、どのようなことが出来るのか、関係者で1回話し合ってみても良いのではないでしょうか。息子さんを罰するのではなく、お母さんを救う為に息子さんを救うと考えて行動すると、状況が動くのではないでしょうか。

今回の事例検討会で皆さんの意見を聞いていて、お母さんを施設にいれるという意見が出なかったのは僕は凄いと思います。なんとかこの状況を乗り越えていこうという意見が、多かったように感じます」
***********************
2019年最初のOMC勉強会は、2月1日(金)です。井田病院の研修医1年目の先生の講演会を予定しています。世界マジシャン大会優勝者という経歴の持ち主で、講演会前にはマジックも披露してくださいます。マジックと医療がどう繋がるののか――興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご参加ください。