今回は、当院と同じ法人の、宮城県大崎市にある「やまと在宅診療所大崎」の院長・大藏暢先生に講師となっていただき、『老年医学、チームアプローチ、そして地方創生』というテーマで講演会を行いました。

老年医学と高齢者医療を専門とされている大藏先生。今回のテーマである3つのキーワードがどのように繋がるのかを、実際の大崎市での取り組みを紹介されながらお話くださいました。

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【講演内容】

  • 老年医学

老年医学のコアコンセプトは「虚弱と老年症候群」。高齢者ケア・高齢者医療は、余命×QOL(生活の質)を最大化することを目的としている。だが、実際は非常に難しく、どちらかを追求するとどちらかが犠牲になるということもある。

85歳や90歳の高齢者に、あと20年も生きるような医療を施したりするが、それは少し違うと思う。日本一、世界一の良い医療をしても、残された時間はある程度決まっており、余命はそんなに伸びない。僕らは老化や死から免れようとするが、人は死から免れることはできない。僕達ができることは、どう生きるか、どう老いるか、どう死んでいくかということを考えられるよう促すこと。そして、QOLをいかに最大化するかということ、これこそが大事なのではないか。

  • チームアプローチ

それでは、生きがいをなくした人のQOLをどうすれば最大化できるかー。

重要なのは、多職種連携である。高齢者を中心にして、蜘蛛の巣のようにみなが関わり合いながら、繋がっていることが大切。ケアプランのゴールを1つに定めて、みなでそこに向かって進んでいく。しかし実際は、職種間の認識や考え方の違いから溝が生まれ、進む方向が違ってしまう場合が多い。

この溝を埋める為に、大崎市の診療所では、月2回多職種カンファレンスを開き、事例検討会を行なっている。事例には力がある。多職種の人たちが1つの事例に向き合うことで、患者さんにとってより良い治療やケアをしていくためにはどうしたらいいのかと、みなが1つの目標に向かって集中できる。実際に事例検討会を繰り返し行うことで、多職種の溝が埋まってきた。

多職種のチーム連携は難しいが、次の2点を意識して遂行している。1点目は、患者さんの為にはどのようにしたらいいのかを考えること。この価値観がずれてしまうと、患者さんの為ではなくなってしまい、誰の為にやっているのかということになってしまう。2点目は職種間同士、お互いに尊敬をすること。お互いが持っているもの、持っていないものを理解し尊敬し合い、プロとしての仕事をしてもらうことが大事。

そして、チームケアにおいても2点のことを意識している。1点目は、ケアの必要量を下げること。2点目は、ご家族を教育し成長させること。家族が在宅で担える以上のケアが必要になってくると、入院や施設入所の可能性がでてくる。どれだけ在宅でケアできるかは、ご家族によってさまざまだが、患者さんのケア必要量をご家族がケアできる範囲内に収めていくことで、患者さんをご自宅で看取ることもできる。実際に、先程出た2点を意識して取り組んできたことで、やまと診療所大崎の在宅看取り率は87%にのぼっている。

  • 地方創生

また、チームアプローチは地方創生にもつながる。

宮城県は人口減少が問題になっていて、大崎市に隣接していてやまと診療所大崎の診療圏内にある涌谷町は、消滅可能性都市と言われている。そんな涌谷町に、「在宅医療中心とした医療介護福祉を作り、日本一そこで生き終えたい村をここで作ればいいのではないか」と提案し、行政の方や住民と定期的に議論をしている。「医療×健康町づくり」として、町民公開講座で在宅診療や高齢者ケアをテーマに話をしたり、専門職を集めた研修会をすることで、少しずつ取り組みに変化があらわれてきた。

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最後に、印象に残ったエピソードについて。涌谷町に住んでいた、ある患者さんの訪問診療をしていたところ、お孫さんが介護職になられた。我々と一緒におじいさんのケアをして医療や介護は素晴らしいと思い、この世界に飛び込んできてくれた。自分たちの地道な草の芽運動が、もしかしたら地域を変えていき、地方創生に繋がるのではないか。

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【講義を受けて出た感想】

勉強会後のアンケートでは「特別なケアをしていなくても専門的なプロの集まりだったら、利用者さんも次第に表情が明るくなるのは素晴らしいと思いました」「とても面白かった。他職種連携の溝の件は常々感じています」「在宅生活を支えるには、地域性がかなり影響すると再確認できました」などのコメントをいただきました。アンケートの結果はこちら

今後も地域の方々と一緒に考えながらより良く連携をとれる関係を目指し、定期的にOMC勉強会を行なっていきます。

次回のOMC勉強会は11月2日(金)18:30〜20:30(18:00受付開始)少しでも興味をお持ちの方は、お気軽にご参加ください。